迦具土のあらぶるなして忽ちに拂ひ竭さむ夷の限り

恨積む夷をこゝに討たずしてなにするものぞ日本軍は

御軍の捷ちの知らせを隙も落ちず待ちつゝ居れば腕鳴り振ふ

    衣

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アイヌが日常の器具などを陳列せるを見てよめる歌三首
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アイヌ等がアツシの衣は麻の如見ゆ うべしこそ樹の皮裂きて布は織るちふ

アイヌ等がアツシの衣冬さらば綿かも入るゝ蒲のさ穗かも

アイヌ等は皮の衣きて冬獵に行く 鮭の皮を袋にむきし沓はきながら

    くさ/″\の歌

     榛の木の花をよめる歌

つくばねに雪積むみれば榛の木の梢寒けし花はさけども

霜解のみちのはりの木枝毎に花さけりみゆ古殻ながら

はりの木の花さく頃の暖かに白雲浮ぶ空のそくへに

田雀の群れ飛ぶなべに榛の木の立てるも淋し花は咲けども

煤火たきすしたるなせどゆら/\に搖りおもしろき榛の木の花

はりの木の皮もて作る染汁に浸てきと見ゆる榛の木の花

榛の木の花咲く頃を野らの木に鵙の速贄《はやにへ》はやかかり見ゆ

はりの木の花さきしかば土ごもり蛙は啼くも暖き日は

稻莖の小莖がもとに目
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