氏と田圃の間を行く、低き山の近く見ゆるに頂まで皆畑なるは珍らし
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甲斐人の石臼たてゝ粉に碎く唐黍か此見ゆる山は
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三日、御嶽より松島村に下る途上
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稗の穗に淋しき谷をすぎくればおり居る雲の峰離れゆく
霧のごと雨ふりくればほのかなる谷の茂りに白き花何
鵯の朝鳴く山の栗の木の梢静に雲のさわたる
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韮崎
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走り穗の白き秋田をゆきすぎて釜なし川は見るに遙かなり
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甲斐に入りてより四日、雲つねに山の巓を去らず
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韮崎や釜なし川の遙々にいづこぞ不盡の雲深み見えず
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祖母石《うばや》より對岸を望む
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いたくたつは何焚く煙ぞ釜なしの楊がうへに遠く棚曳く
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臺が原に入る
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白妙にかはらはゝこのさきつゞく釜無川に日は暮れむとす
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四日、臺が原驛外
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小雀《こがらめ》の榎の木に騷ぐ朝
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