まだき木綿波雲に見ゆる山の秀《ほ》
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信州に入る
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釜なしの蔦木の橋をさわたれば蓬がおどろ雨こぼれきぬ
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富士見村
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をすゝきの※[#「木+若」、第3水準1−85−81]《しもと》に交り穗になびく山ふところの秋蕎麥の花
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坂室の坂上よりはじめて湖水を見る
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秋の田のゆたかにめぐる諏訪のうみ霧ほがらかに山に晴れゆく
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六日、諏訪の霧が峰に登る、途上
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たていしの山こえゆけば落葉松《からまつ》の木深き溪に鵙の啼く聲
立石の淺山坂ゆかへりみる薄に飛彈の山あらはれぬ
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霧が峰
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うれしくも分けこしものか遙々に松虫草のさきつゞく山
つぶれ石あまたもまろぶたをり路の疎らの薄秋の風ふく
霧が峰は草の茂山たひら山萩刈る人の大薙に刈る
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八日、鹽尻峠を越えて桔梗が原を過ぐ
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しだり穗の粟の畑に墾りのこる
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