りさく花散りて世の炭がまは燒かぬ此頃
炭がまを夜見にゆけば垣の外に迫るがごとく蛙きこえ來
炭がまを這ひ出てひとり水のめば手桶の水に樫の花浮けり
廐戸にかた枝さし掩ふ枇杷の木の實のつばらかに目につく日頃
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少弟整四郎四月二十九日を以て征途に上る曰く、自ら訓練せる小隊を率ゐるなりと、予妹二人を伴ひて下野小山の驛に會す、彼等三人相逢はざること既に數年、言なくして唯怡然たり、短歌五首を作りて之を送る
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大君の御楯仕ふる丈夫は限り知らねど汝をおもふ我は
我が庭の植木のかへで若楓歸りかへらず待ちつゝ居らむ
淺緑染めし樹群にあさ日さしうらぐはしもよ我がますら男は
竹棚に花さく梨の潔くいひてしことは母に申さむ
おぼろかに務めおもふな麥の穗の秀でも秀でずも問ふ所に非ず
雜詠八首のうち
篠の葉のしげれるなべに樒さき淋しき庭のうぐひすの聲
新墾の小松がなかに作りたる三うね四うねの豌豆の花
青葱の花さく畑の桃一樹しげりもあへず毛虫皆喰ひ
桑の木の茂れるなかにさきいでゝ仄かに見ゆる豌豆の花
行々子の歌
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