が水を出で妻木何焚く菜種殼焚く
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館山灣
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萍の菱の白花々々と小波立てり海平らかに
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六月一日、館山灣の北を扼する大房の岬に遊ぶ
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かさご釣る磯もしづけみ頬白の鳴くが淋しきこれの遠崎
おもしろき岬の松の繩繋ぎ犢の牛に草飼ふところ
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二日、孝子塚を見る、孝子は名を伴家主といふ、父母の歿後その像を刻みて之に仕ふること生けるが如く終身渝ることなし、朝廷嘉賞して租税を免ず、事は仁明天皇の承和年間に係る、爾來一千年此郷の士人碑を國分寺に建てゝ之を頌す、近年復た萱野の地に建碑の擧あり、刻むに菊池容齋描く所の伴家主の像を以てせり。
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茅花さく川のつゝみに繩繋ぐ牛飼人に聞きて來にけり
いにしへもいまも同じく安房人の誇りにすべき伴家主《あたへぬし》これ
伴家主おやを懷ひし眞心は世の人おもふ盡くる時なく
うらなごむ入江の磯を打ち出でゝおやにまつると鯛も釣りけむ
父母のよはひも過ぎて白髪の肩につくまで戀ひにけらしも
麥つくる安房のかや野の松蔭に鼠麹
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