蚯蚓かも

胡蝶花の根に籠る蚯蚓よ夜も日もあらじけむもの夜ぞしき鳴く

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二十八日、清澄の谷に錦襖子《かじか》を採りてよめる歌八首のうち
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萱わくるみちはあれども淺川と水踏み行けばかじか鳴く聲

黄皀莢《さるかけ》の花さく谷の淺川にかじかの聲は相喚びて鳴く

鮠の子の走る瀬清み水そこにひそむかじかの明かに見ゆ

我が手して獲つるかじかを珍らしみ包みて行くと蕗の葉をとる

かじか鳴く谷の茂りにおもしろく黄色つらなる猿かけの花

さるかけのむれさく花はかじか鳴くさやけき谷にふさはしき花

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二十九日
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蒼海原雲湧きのぼりひた迫めに清澄山に迫め來る見ゆ

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八瀬尾の谷に日ごと炭燒く人をおとづれてよみし歌のうち一首
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こと足りて住めばともしも作らねど山に薯蕷堀る谷に蕗採る

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三十日、清澄山を下りて小湊を志す、天津の町より道連になりたる若き女は漁夫の妻なりといふ、十里ばかり北の濱より濱荻といふ所にかしづきて既に四とせになれど子もな
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