る。(十月五日作)
[#ここで字下げ終わり]
芒野ゆふりさけ見れば淺間嶺に没日に燒けて雲たち出でぬ
とことはに燃ゆる火の山淺間山天の遙に立てる雲かも
楯なはる山の眞洞におもはぬに雲の八つ峰をけふ見つるかも
まなかひの狹國なれど怪しくも遙けきかもよ雲の八つ峰は
淺間嶺にたち騰る雲は天地に輝る日の宮の天の眞柱
淺間嶺は雲のたちしかば常の日は天に見しかど低山に見ゆ
眞柱と聳えし雲は燃ゆる火の蓋しか消ちし行方知らずも
雲の峰
おしなべて豆は曳く野に雲の峰あなたにも立てばこなたにも見ゆ
雲の峰ほのかに立ちて騰波の湖の蓴菜の花に波もさやらず
霜
綿の木のうね間にまきしそら豆の三葉四葉ひらき霜おきそめぬ
かぶら菜に霜を防ぐと掻きつめし栗の落葉はいがながら敷く
此日ごろ霜のいたけば雨のごと公孫樹の黄葉散りやまずけり
藁かけし籬がもとをあたゝかみ霜はふれども耳菜おひたり
あさ毎におく霜ふかみ杉の葉の落ちてたまれど掃かぬ此ごろ
冬の田の霜のふれゝば榛の木の蕾のうれに露垂れにけり
いつしかも水菜はのびて霜除に立てたる竹の葉は落ちにけり
鬼怒川の冬のつゝみ
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