の聲

鬼怒川の蓼かれ/″\のみぎはには枸杞の實赤く冬さりにけり

小春日の鍋の炭掻き洗ひ干す籬をめぐりてさく黄菊の花

朴の木の葉は皆落ちて蓄への梨の汗ふく冬は來にけり

    鬼怒川のほとりを行く

秋の空ほのかに燒くる黄昏に穗芒白し闇くしなれども

    變調三首

      一
狹田の、稻の穗、北にむき、みなみに向く、なにしかもむく、秋風のふく。(舊作)

      二
粘土を、臼に搗く、から臼に、とゞとつく。すり臼に、籾すると、すり臼を、造らむと、土をつく、とゞとつく。(舊作)

      三
黍の穗は、足で揉むで、筵に干す。胡麻のからは、藁につかねて、竿に干す。さぼすや、秋の日や、一しきり、二しきり、むくどりの、騷だち飛むで、傾くや、短き日や。

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明治三十年七月、予上毛草津の温泉に浴しき、地は四面めぐらすに重疊たる山嶽を以てし、風物の一も眼を慰むるに足るものあることなし。滞留洵に十一週日時に或は野花を探りて僅に無聊を銷するに過ぎず、その間一日淺間の山嶺に雲の峰の上騰するを見て始めて天地の壯大なるを感じたりき。いま乃ちこれを取りて短歌七首を作
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