さびしも
むさし野の大根の青葉まさやかに秩父秋山みえのよろしも
はら/\に黄葉散りしき眞北むく公孫樹の梢あらはれにけり
秋の田に水はたまれり然れども稻刈る跡に杉菜生ひたり
此日ごろ庭も掃かねば杉の葉に散りかさなれる山茶花の花
鴨跖草のすがれの芝に晴るゝ日の空のさやけく山も眞近し
もちの木のしげきがもとに植ゑなべていまだ苗なる山茶花の花
葉鷄頭は種にとるべくさびたれど猶しうつくし秋かたまけて
さびしらに枝のこと/″\葉は落ちし李がしたの石蕗《つはぶき》の花
秋の日の蕎麥を刈る日の暖に蛙が鳴きてまたなき止みぬ
篠のめに萵雀《あをじ》が鳴けば罠かけて籾まき待ちし昔おもほゆ
鵲豆《ふじまめ》は庭の垣根に花にさき莢になりつゝ秋行かむとす
うらさぶる櫟にそゝぐ秋雨に枯れ/″\立てる女郎花あはれ
麥をまく日和よろしみ野を行けば秋の雲雀のたま/\になく
いろづける眞萩が下葉こぼれつゝ淋しき庭の白芙蓉の花
庭にある芙蓉の枝にむすびたる莢皆裂けて秋の霜ふりぬ
いちじろくいろ付く柚子の梢には藁投げかけぬ霜防ぐならし
辣薤《おほみら》のさびしき花に霜ふりてくれ行く秋のこほろぎ
前へ
次へ
全83ページ中26ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング