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茨城は狹野にはあれど國見嶺に登りて見れば稻田廣國
國尻のこの行き逢ひの眞秀處にぞ國見が嶺ろは聳え立ちける
松がさ集
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なにをすることもなくてありけるほど鎌もて門の四つ目垣のもとに草とりけることありけり。近きわたりの子供二人垣のもとにいよりて物もいはずしてありけり。我れ、この鎌もて汝等が頭斬りてむと思ふはいかにといへば、大きなるが八つばかりになりけるが、訝かしげなる面貌にて否といふ。我れ汝らが頭きらむといふはよきかうべにして素の形につけえさせむと思ふにこそといへば、いよ/\訝しみ駭けるさまにて命死なむことの恐ろしといひて垣のもととほぞきて唯否とのみいひけり。小さなりけるは四つばかりになりけるが、そは飯粒《いひぼ》もてつくるにやとこれもいたくおどろけるさまにてひそやかにいひいでけり。腹うち抱へられて可笑しさ限りなかりき。罪ある戯れなりかし。メンチといふものを玩ぶとて常に飯粒もてつけ合せけるよし母なるものゝきゝて笑ひつゝかたりけり。
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利鎌もて斷つといへどももとほるや蚯蚓の如き洟垂るゝ子等
みゝず/\頭
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