、森の見ゆらく、

     短歌

太刀の尻さやに押してるよひ月の明りにくれば寒しこの夜は

     人々のもとにおくりける歌
    一
いにしへのますら武夫も妹にこひ泣きこそ泣きけれその名は捨てず

世の中は足りて飽き足らず丈夫の名を立つべくは貧しきに如かず
    二
沖の浪あらし吹くとも蜑小舟おもふ浦には寄るといはずやも

葦邊行く船はなづまず沖浪のあらみたかみと※[#「楫+戈」、第3水準1−86−21]とりこやす
    三
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明治三十五年の秋あらし凄まじくふきすさびて大木あまた倒れたるのちさま/″\の樹木に返りざきせしころ筑波嶺のおもてに人をたづねてあつきもてなしをうけてほどへてよみてやりける歌
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いづへにか蕗はおひける棕櫚の葉に枇杷の花散るあたりなるらし

苦きもの否にはあれど羹にゝがくうまけき蕗の薹よろし

くゝたちの蕗の小苞《をばかま》ひた掩ひきのおもしろき蕗の小苞

秋まけて花さく梨の二たびも我行けりせば韮は伐りこそ

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明治三十五年秋十月十六日、常毛二州の境に峙つ國見山に登りてよめる歌二首

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