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天の御影地の御影と天地の神の造りし石の名なるべし
筑波嶺ゆつゞく長山短山天の御影になりのよろしも
夏季雜咏
其一
さみだれの降りもふらずも天霧らひ月夜少なき夏蕎麥の花
なつそばのはなに白める五月雨の曇月夜にふくろふの啼く
干竿に洗ひかけほす白妙の衣のすそのたち葵の花
あさ霧の庭をすゞしみ落葉せる樒がもともたち掃きにけり
にほとりの足の淺舟さやらひにぬなはの花の隱《こも》りてをうく
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やまべといふうをの肉も骨も一つにやはらかなるは五月雨のふりいづるまでのことなり
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鬼怒川の堤におふる水蝋樹《いぼたのき》はなにさきけりやまべとる頃
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やまべは網してとり、鯔《ぼら》は糸垂れてとる
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忍冬の花さきひさに鬼怒川にぼら釣る人の泛けそめし見ゆ
即事
鬼怒川の高瀬のぼり帆ふくかぜは樗の花を搖らがして吹く
其二
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七月十一日といふより十日が程は全くくふ物を斷ちて水ばかり飲みて打ち過しけり、幼き時より胃のわづらひを癒さ
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