衣も濡れて、泥にさへいたく塗れて、泣く/\にかへらひにける、おそ人とこを聞く人の、豈嗤はざれや(三十七年六月)

      短歌

萬葉は道の直道然れども心して行けおほにあらずして

萬葉は兒の手柏の二面に三面四面に八|面《おもて》に見よ

藍染の衣きる人は藍の如ひいでむとこそ心はあるらめ

筍のひでもひでずも萬葉の閾を超えて外に出でざめや

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明治三十七年一月三十一日長妹とし子一女を擧ぐ、長歌一篇を賦しておくる、篇中の地はとし子が居住に接せり、歌に曰く
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朝月の敏鎌つらなめ、馬草刈りきほふ處女の、朱の緒の笠緒の原の、したもえの春さりあへず、やすらけくあれし女の子は、垂乳根の母が乳房を、時なくと含む脣、脣のつゝめる奥に、飯粒《いひぼ》なす白齒かそけく、足手振り笑むらむさまを、家こぞり待つらむものぞ、はや大にあれ。

      反歌
小夜泣きに兒泣くすなはち垂乳根の母が乳房の凝るとかもいふ

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花崗岩といふものは譬へば石のなかの丈夫なり、筑波につづく山々はなべてこの石もて成る(三十七年六月)
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