ほろぎの聲

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長野々尻間河にのぞみて大樹おほし
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木曾人よあが田の稻を刈らむ日やとりて焚くらむ栗の強飯《こはいひ》

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妻籠《つまご》より舊道を辿る、溪水に襯衣を濯ぎて日頃の垢を流す、又巨巖の蓬を求めて蓙しきて打ち臥す、一つは秋天の高きを仰ぎ、一つは衣の乾く程を待つなり
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ゆるやかにすぎゆく雲を見おくれば山の木群のさや/\に搖る

冷けき流れの水に足うら浸で石を枕ぐ旅人われは

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馬籠《まごめ》峠を美濃に下る
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まさやかにみゆる長山美濃の山青き山遠し峰かさなりて

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十一日、釜戸より日吉といふ所へ越す峠に例の蓙をしきて打ち臥すに小き聲にて忙しく鳴く虫あり、日ごろも聞く所なり、蝉の小さなるものなりと或人いふ、ちつち蝉といふものにや、草のなかにあれば假に草蝉とよびて
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汗あえて越ゆるたむけの草村に草蝉鳴きて涼し木蔭は

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日吉より次月《しつき》というところへ越す
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なみなへし短くさける赤土の稚松山は汗もしとゞに

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十二日、中山道伏見驛より川を下らむとして成らず、獨り國道を辿る
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木曾川のすぎにし舟を追ひがてに松の落葉を踏みつゝぞ來し

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木曾川の沿岸をゆく
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鱗なす秋の白雲棚引きて犬山の城松の上に見ゆ

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各務が原
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淺茅生の各務《かゞみ》が原は群れて刈る秣千草眞熊手に掻く

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十五日、江崎なる華園氏のもとを辭して大垣に至る
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松蔭は篠も芒も異草も皆悉くまむじゆさげ赤し

鯰江の繩手をくれば田のくろの菽のなかにも曼珠沙華赤し

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十六日、潮音氏に導かれて大垣より養老山に遊ぶ、途に遙に小爆布をのぞむ
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多度山の櫟がしたに刈る草の秣が瀧はよらで過ぎゆく

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養老公園
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落葉せるさくらがもとの青芝に一むら淋し白萩の花

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養老の瀧

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