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白栲の瀧浴衣掛けて干す樹々の櫻は紅葉散るかも
瀧の邊の槭《もみぢ》の青葉ぬれ青葉しぶきをいたみ散りにけるかも
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十七日、潮音、蓼圃の兩氏と揖斐川の上流に鮎簗を見る
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揖斐川は鮎の名どころ揖斐人の大簗かけて秋の瀬に待つ
揖斐川の簗落つる水はたぎつ瀬ととゞろに碎け川の瀬に落つ
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十九日、大垣を立つ、雨
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近江路の秋田はろかに見はるかす彦根が城に雲の脚垂れぬ
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石山寺附近
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蜆とる舟おもしろき勢多川のしづけき水に秋雨ぞふる
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粟津
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秋雨に粟津野くれば葦の穗に湖靜かなり遠山は見えず
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逢阪を越えて山科村に至り、天智天皇の山陵を拜す
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秋雨の薄雲低く迫り來る木群がなかや中の大兄すめら
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二十日、雨、法然院
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ひやゝけく庭にもりたる白沙の松の落葉に秋雨ぞ降る
竹村は草も茗荷も黄葉してあかるき雨に鵯ぞ鳴くなる
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白河村
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女郎花つかねて浸てし白河の水さびしらに降る秋の雨
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一乘寺村
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秋雨のしく/\そゝぐ竹垣にほうけて白きたらの木の花
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詩仙堂
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落葉せるさくらがもとにい添ひたつ木槿の花の白き秋雨
唐鶸《からひは》の雨をさびしみ鳴く庭に十もとに足らぬ黍垂れにけり
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下鴨に詣づ、みたらしの上には樟の大樹さし掩ひて秋雨のしづくひまもなし
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糺の森かみのみたらし秋澄みて檜皮《ひはだ》はひてぬ神のみたらし
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二十一日、伏見桃山
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柿の木の林がもとはおしなべて立枝の獨活の花さきにけり
みちのへに草も莠《はぐさ》も打ち茂る圃の桔梗は枯れながらさく
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愚庵和尚の遺蹟を訪ふ、庵室の縁の高きは遠望に佳ならむがためなり、戸は鎖したれど時久しからねば垣も未だあらたなり。清泉大石のもとを流る
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