と、ぬた人のこゝだくに喰ひ、ぬたぐそをこゝだくまれば、柿の木の枝は茂りて、片枝は家にかぶさり、片枝は庭にひろごり、うまし實はあまたみのらひ、その枝の折れやせんと、竹さゝへ木さゝへし、ひたすらに赤らむ待つを、宵々に家の外に來て、折々は空泣く鬼の、攀ぢ登り取りてくらひ、殘る實のありのことごと、たふさぎを解きて包むと、あやまりて落す響に、驚きし犬の吠ゆれば、ぬた人は人呼びつどへ、荒繩を堅繩になひ、うちふるひ木に居る鬼を、うしろ手の小手にしばりて、左角いたく叩けば、ひだり角かしらに入りぬ、みぎり角いたく叩けば、右角かしらに入りぬ、手を打てば手なくなり、足打てば足もなくなり、うつそみの世にはえ知らぬ、柿の實の赤き實となり、ふつ枝のほつ枝がもとに、さがりけるはや
東宮御西遊
天つ日の日つぎにませば日のみこは國原まねくいめぐりたまふ
とよ秋をきよみさやけみいまだみぬ國をみさすといでたゝすかも
たなつものみのらふ秋をよろしみといでます空に鶴なきわたる
みあらかをまだきたゝして白雲のたなびく山のあなたゆかすも
とこよべにありとふ神は和田の原沖の汐路に玉しくらむか
白雲のむかふすかぎ
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