んとすれば其光きえぬ

    星

國原はやみの夜空におほはれて星あきらかに天の川流る

山かげの桃の林に星落ちてくはし少女は生れけむかも

ぬば玉の闇の夜空に尾をひきて遠津海原ほしとびわたる

    瀧

うちわたす二つの瀧の下つせの落合の瀬は木深み見えず

二荒のふもとをゆけば野のきはみ山あひにして瀧かゝるみゆ

二荒の山のつゞきの山もとにたぎつ七たき七つなみおつ

あしひきの山の夕立風あれて瀧のとゞろの音もきこえず

杉の木のしみたつ山の山おくの雲わくところたきおちとよむ

    星

久方のみ空を雲のゆきかひに見えみ見えずみ星うつる水

    或日人の家にて朝顏を見てよめる

松をうゑ茄子をつくるかたはらに朝顔はひて垣にからめり

朝顔と葡萄の棚とあひならび葡萄の蔓に朝顔からむ

もとあらの棚に這はせし朝顔のいや長蔓のしげりはびこる

この庭の朝顔きりてつなげらばさき村ゆきて木にからむべし

棚にしてからむ朝顔その蔓のたれしところに莟ふくれつ

    萩

萩の花ぬける白玉ともしけど露にしあればとりがてにすも

ひまあらの垣にしげれる白萩のしら/\見えて夕月のぼる


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