千夫氏と四ツ木の吉野園に遊びて
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尖葉の菖蒲のくさの花さきて白にむらさきに園にぎはしも

四つ柱土にうづめて藁ふきてあやめの園にあづまやを建つ

梅の木の青葉のもとに雲なしてさける菖蒲にひろき園かも

廣園のあやめの花のはなびらのひとつ/\に風ふきわたる

菖蒲草その花びらのむらさきを衣にし摺りて妹に着せばや

大きなる菖蒲のつぼみ花になりて萎みし花の上をおほひぬ

はなびらのうすむらさきに紫の千|筋《いき》百いきいきあるあやめ

菖蒲草しぼり隈どり品はあれど白とむらさきと二つを喜ぶ

あやめ咲く園の細道いくめぐり池をめぐりて亭にいこひつ

三つひらの菖蒲の中に六つひらの菖蒲の花のともしきろ鴨

むらさきの菖蒲の花は黒くして白きあやめの目にたつ夕べ

藁ぶきの四阿すでに灯ともして園のあやめはたゞ白く見ゆ

菖蒲さく園を訪ひ來て其園に水鷄巣くひしはなしを聞きぬ

ぬば玉の夜のあやめのうね/\は白木綿布をしけるが如し

ともし火を釣りたる園の四阿のまはりに白きあやめ草かも

白妙のあやめの上をとぶほたるうすき光をはなちて去りぬ

たま/\に出でし螢をめづらしみ取ら
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