こゝに咲く見ゆ

梅の木は花かも咲けるひはつ女の白珠粧ひ今するらしも

白珠は緒にも貫かくと照るといへど枝に貫く珠香さへ包めり

鶯の咋ひ持つ花を緒に貫きていかけ引けらば寄り來ざらめや

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香取の梅を見て
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吾はもや梅見にきたりこの春は復は見がたみけふ見にきたり

かしこくも吾はあるかも春雨の降りての後に梅見すらくは

舟の秀ははろかにあれどこゝにして振放見れば梅の上ゆ見ゆ

※[#「楫+戈」、第3水準1−86−21]取のや稻幹くゝる薦槌のい行きかへらむ梅見つ吾は

梅の花咲きも咲かずも川舟の潮來《いたこ》の見ゆるこの岡うるはし

全木には梅まだ咲かずうべしもよ麥の青薦しきうすくこそ

この梅は花の乏しも春風の吹き少なみか花の乏しも

    桃

ゆた/\と柳の糸を針に貫き縫ひて垂れけむ桃のとばりか

あまさかる鄙少女等が着る衣のうすいろ木綿と桃咲きにけり

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二月二十五日筑波山に登りて國見して作れる歌十首
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筑波嶺ゆ振放見れば水の狹沼水の廣沼霞棚引く

御鏡の息吹のはしに曇るなす國つ廣湖
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