ガラス戸のそとに飼ひ置く鳥の影のガラス戸透きて疊にうつりぬ

枝の上にとまれる小鳥君のために只一聲を鳴けよとぞ思ふ(座上の剥製の鳥あり)

    四月短歌會

     桃花

庭の隅に蒔きたる桃の芽をふきて三とせになりて乏しく咲きぬ

     星

夜になれば星あらはれて晝になれば星消え去りて月日うつり行く

     化物

ものゝけの三つ目一つ目さはにありと聞けどもいまだ見し事の無き

     剥製鳥

木の枝にとまれる鳥のとまり居て逃ぐる事もなし鳴く事もなし

    竹の里人に山椒の芽を贈りて

山椒はくすしき木なり芽もからくその實もからくその皮もからし

鄙にあれば心やすけし人の家の垣の山椒の芽を摘みて來つ

山椒の刺をかしこみ手をのべて高きほつ枝の芽を摘みかねつ

山椒の花はみのらず花咲かぬ山椒の木に實はむすぶとふ

竹やぶの山吹咲きて山椒の辛き木の芽の摘むべくなりぬ

    同※[#「木+怱」、第3水準1−85−87]の芽を贈りて

藪わけてたらの木の芽を尋ぬればさきだつ人の折りし跡あり

紙につゝみ火にあぶりたるたらの芽は油にいりてくらふべらなり

たらの
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