まにま。とりじもの朝立ち出でゝ。下埴生の成田の寺に。夕さりにい行き到れば。人あまたそこには滿ちて。靈しくも八棟立ちなみ。珍らしき物さはなれど。玉の輪と捲ける太綱は。いた惱む吾背がためと。まかなしきめづ兒がためと。をみな子の思ひしなえて。丈長のその玄髪を。利鎌もて萱刈る如く。ふさたちて供へまつれば。千五百房八千五百房と。山のごとつもれる髪を。堅よりによりて結びて。この岡の岡の上ろに。棟引くと掛けし毛綱ぞ。下埴生にいます佛は。上つ代ゆ今のをつゝに。たふとみと人の來寄れば。この綱のいや長々に。太綱のたゆることなく。後の世もしかぞあるべき。み佛の寺。
をみな子のその丈長の黒髪を斷ちて結びし太綱ぞこれ
冬の夜
いちしばの林がうれに。凩のいたくし吹けば。まげいほのいほのめぐりは。黍の稈しゞにゆへども。すべもなく寒くしあるを。ぬば玉の夜さりくれば。焚木だに折りてはたかず。ともし灯を中にかくみて。にひ藁を繩になひつぎ。白糸を※[#「角+燗のつくり」、40−3]《わく》に手くると。ひまもなくいそしむ人の。ふけ行けばすのこが上に。しづ衾引きかゝぶりて。さぬらくの安しとかもよ。うけくは知らに。
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