便を出すため宗道へ行く、斬髮、夜に入りてかへる、
甘酒を作るために焚いた飯へ餡をのせてくふ、卵のふわ/\、葱と鰌の汁、
樒柑[#「樒柑」に「ママ」の注記]の霜よけ、牡丹の霜よけ取拂ふ、
梅やゝだらける、
自分の座敷へ箪笥や長持を運び込まれたので急に狹くなつた、
十二日、木曜、朝雨、忽ちにして霽、
午後、妹の鏡臺に手入れする所があつたので杉山の建具屋へ行く、貧乏な淋しい店先で自分はかゞんだまゝ見て居ると建具屋が突然立つて勝手の戸をあけるや否やひどい叫び聲をした、火が一面に燃え揚つて居た。女房が釜くどの前へ籠をころがしたまゝで水汲みに行つたうちに火が燃えしや[#「しや」に「ママ」の注記]つて、籠の松葉へついたのだ相だ忽ちのうちに消しとめた、建具屋は頻りに怒鳴つて怒つてゐる、女房は困つた顏でぼんやり立つて居る、隣のものもかけてきて立つて居る、火事騷ぎとしては尤も小さな騷ぎだが騷ぎは騷ぎであつた、半燒の物件は左の如くである、
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一、竹籠、一、松葉一籠、一、古手拭一本、
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夕方左千夫へ返事の稿をつぐ澁る、やめ、
この日の來客中岫のね
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