、麥飯、豚汁、酸味つかり、
夜、橦木町に從兄を訪ふ、不在、公園に行く、春雨ちら/\としてやみまたちら/\としてやむ、梅はうすらにぼんやりと白く見えた、自分の外に人はなかつた。
十日、火曜、快晴、寒からず、
四時に目醒む、雨ざあ/\と降る、蛙鳴く、
六時起床、けさだけ冷水浴やすみ、
火鉢を擁して雜談、蛙のいま鳴くのは土中に在りて鳴くのだといふこと、鋸で鯰を捕るといふこと等、
八時二十分發車、
仙波兵庫といふ男が同室に乘込んで居た、父舊知だ相だ、代議士になつたのでみんなが不思議にして居たのである、尤も二十三年このかた選擧のたび毎に候補に立たないことがなかつたさうだ、つまり根氣で成功したのだ、しかし人物が屑なので困る、
雨がやんだ、空がはれかゝつた、笠間驛へつく、
父はこゝに下車、叔父の家へ行くのである、自分は乘りつゞける、
岩瀬で仙波は下りた、紫の褪めきつた風呂敷包と、破れた鞄とを持つて居た、
夕方にやうやく家へついた、表の廣間に妹の仕立物がならべてある、かね/″\見たいと村の者がいつて居たので女房達を呼んで見せたのだ相だ、もう大勢かへつた趾[#「趾」に「ママ」の注
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