うしてきら/\と白く光る。一杯に花簪を※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]して居たのである。簪はひら/\と搖れながらきら/\と光る。能く見ると女の衣物は赤と青との思ひ切つた大きなだんだらの絞りである。さうして臀から包んだ扱帶の端がふさ/\と餘してある。河井さんが立つてこちらへ戻つた時、女は扱帶と袂とを膝へ乘せてもとの如く柱の蔭にしやんとして畢つた。余は女が太夫であることを悟つた。それと共に余は遊女といふものゝ女らしいしとやかさを意外に感じた。暫くして二階へ案内された。先刻の婆さんが余の荷物と洋傘とを持つて踉いて來る。大廣間である。表の窓の障子に近く燭臺が二つ置かれて蝋燭がともされてある。手焙が一つ傍にある。燭臺も手焙も古い朱塗である。婆さんは余の荷物を部屋に相應した其大きな違棚へ乘せた。蝙蝠傘も棚へ立て挂けた。汚い風呂敷包の荷物が不調和に感ぜられた。室内はうつすらと煤びて居る。蝋燭の烟が僅に立つて居るのを見ると其烟の爲めに煤けたのに相違ない。それにしても蝋燭がどれ程こゝにともされたことであらうかと驚かれる。河井さんは此所は緞子の間であるといつた。建具
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