栗毛虫
長塚節

−−
【テキスト中に現れる記号について】

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例))なか/\
−−

 風邪でも引いたかといふ鹽梅に頭がはつきりしないので一旦目は醒めたがまた寢込んでしまつた、恐らく眠りも不足であつたのらしい、みんなはもう野らへ出たのであらう家の内はまことにひツそりして居る、
 霖雨つゞきの空は依然として曇つて居るが、いつもよりは稍明るいのであるから一日は降らないかも知れぬと思ひながらぼんやりと眺めて居つた、
「サブリだもの屹度後には雨だよ、どんな旱でも今日明日と降らなかつたことは無いのだから
 と母はいつた、そんなことも有るものか知らんと自分は只聞き流した、この頃のやうに鬱陶しい時は頭が惡くなつて困る、することがみんな懶い、自分でもこれでは成らんと思つてもやつぱりぼんやりして居る、こんな時には隨分馬鹿々々しいこともやつて見ることがある、少し寒けがするので襯衣を着込む足袋を穿くして居るうちに栗毛虫でも叩き落してやらうと云ふ氣になつた、こ
次へ
全6ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング