も/\けツかりやがらあなんて怒ツて居やがツて、隣のお稻さんらあ帶までこせえたのに、おらほんとに泣きたくなツちやツたツけや、ゆんべらもいくら粟ぶち忙しいツて、晩くまでやらせて、とう/\あたま結はねツちやツた、けさら闇えに起きたツてあたまゆつたりなにつかしたんで、みんな等に待つてられてせか/\してしやうなかツた、そんでもおらへのおつかはわれが野呂間だからなんて怒つてばかし居やがツて、ゆんべ碌に寢ねえから今日はねむくツてしやうがねえ
 こんなことを思ひつゝ歩行いてるのではないかなどゝ考へるうちに遠くへ行き過ぎてしまふ、
「けふは降られねえで助かツた、お米さんが單衣物借りてきたんで、汚しちや大變だと思つてなんぼ心配したか知れやしねえ
 といひ相なのや
「おらゆんべら、あたまおツこはしちや仕やうねえと思つて夜ツぴてうつぶになツて寢て居たんで、けさら目ぶちが腫れぼツたかツた
 といふのや
「足うツちやりたくなツちやツた
 といふのやいろ/\が、いづれも澁紙のやうな顏へ思ひ切ツて白粉をこて/\となすり付けて居る、なすり付けたといふよりも、こすり込んだといひたい、さうしてそれが汗をかいて白粉が剥げたと
前へ 次へ
全9ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング