でございますが、これは會員が筑後の柳川[#「川」に「ママ」の注記]へまゐりました折飛入さんが持つて出られたのを會員が大きに受けるのに困難いたしましたのでありますが、神戸氏がその術を授かりましたものであります……
と長々しい口上があつて立ち合に及ぶと神戸は割棒の片々を立て片々を斜に向けて構へたが先が動かないので「飛び込んで來ないなと言ひながら、こんどは横に開いて一方で自分の胴を挾み一方を敵に向けて構へた、ポント打ち下す太刀を受けておいてずつと進撃する竹刀の方は逃げかかる、跡を追ひまはす、とう/\竹刀と共に面をがつしりと挾んでしまつた、金將の役は手も立たず破れた、王將の役にまた竹刀を持つたのが出た、神戸の武器はまた變つた、即ち鎖鎌である、鎌のさきについた錘は非常なる速さを以てめぐるのであるが相手の竹刀が折々變な身振りをして居るうちに「小手ッといふ聲と共にポカッと音がしたのであつたが「まだ/\流れたぞ、そんなことで駄目なこつたと竹刀を持つたのがなか/\降伏しない、つゞいて「お面ッ、お胴ッといふたびにポカポカ聞えるのであるが、竹刀の方はいつがな充分とは言はぬ、「こいつ剛情な奴だなと言ひながら
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