も三本勝負であつたが疲れた薙刀つかひはもう駄目であらうと思つたのが誤で、さすがは日々の稽古のためであらう、その鉾尖はたしかである、竹刀のために惱まされることは甚だしかつたが、しかし竹刀も決して打ち据ゑることが出來ずしばらく亂戰のさまであつたが「平では切れないぞ、それでは柄だぞ柄では切れないぞと、竹刀が叫べば「そんなのがよければこつちからも行つてますよと薙刀つかひの爭ひかたはおだやかである、パキリ/\と脛を打つやうであるがなる程平で打つたと思ふこともあるし柄で打つたと思ふこともありまた、折角の突きが少し足らなかつたりすることもあつたが勝はとう/\薙刀つかひに歸した、見物人は二たび喝采した、桂馬の旗は銀將と替へられて三人目に出たのは黒革の胴に堅めた七八寸[#「七八寸」はママ]もあらうと思はれる背丈で肉は落ちて居るが見るから立派な丈夫である、二人までも引受けて疲れに疲れた薙刀つかひはもう彼の敵ではない、面憎きまで悠然と構へた彼は薙刀つかひがあせればあせる程おちつき拂つて受流しては切り込むので、さうでなくとも亂れてゐる薙刀は哀れなさまに切りまくられて忽ちの間に破られてしまつた、薙刀を杖[#「杖
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