れば庭でその前が門になつて居る、右手即ち西にも障子四枚これを開けば椽側からぢき書院で、書院の庭の一部分が見える、左手の方は杉帶戸で間が別である、そして障子の角が戸袋になつている、自分の寫生をしやうといふは奧の庭であるが先づ表の障子を開けて見得らるゝ間に限つて見やうと思ふが、戸袋から南へ戸の塀が三間で平氏門、それからつゝいて前の塀が二間これは表庭と奧庭との隔てゝそのへいである、
三株の老梅が一部分は戸袋にかくれて塀の上から見える、二株は蕾が殆んどなくなつて遲い一株が半は開いて居る、その枝の下に南天の木のうらが一寸出てゐる、梅の枝と平氏門のはしとが距離が二尺でその間から肉桂の梢が見える、半は梅に遮れた肉桂の上には松が二三本スーと立つ、老梅の枝の間からは大小六七本固まつた樅の木が見える、門の椽と塀の上の瓦と一尺ばかりの空虚からは桧葉の植込の一部がかすかに見られる、それから塀の小窓を透しては一寸出て居る南天が二本の幹と、老樹の一部と肉桂の下部とそこに結つてある馬塞垣と肉桂の上に立つてる松と塀と門との空虚から見える桧葉との根方が明かに見える、そして松葉の濡れたのまでがわかる、
こゝから見た所
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