鉛筆日抄
長塚節

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)東名《とうな》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)小※[#「竹/(目+目)/隻」、第4水準2−83−82]《こわく》に

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例))ぼくり/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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     八月二十九日

▲黄瓜
 松島の村から東へ海について行く。此れは東名《とうな》の濱へ出るには一番近い道なので其代りには非常に難澁だといふことである。磯崎から海と離れて丘へ出た。丘をおりるとすぐに思ひ掛けぬ小さな入江の汀になつた。青田があつて蘆の穗も茂つて居る。蘆のなかにはみそ萩の花がしをらしく交つて居る。畦を拾つて行くと田甫が盡きて小徑もなくなつた。仕方がないから楢の木の間を心あてに登つたら往來があつた。丁度いゝ鹽梅に鰌賣でもあらうかと思ふ男が天秤を肩に乘せた儘ぶらつと兩手をさげて左の方から坂をのぼつて來たから一所になつて噺をしながら歩い
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