んなことで濟んでるなら人が共々心配をする必要はないのである。それから兄貴へ
「あの一件も困つたものだな」
といふと
「困つたものですよ」
といふから
「お前もあゝして二人を引きつけて置くのでは迚ても埓明きやうはないからお前もおすがを捨てることにしてそれで他から拾ふといふことにしたらどうにか示談が出來相なものだと思ふがどう考へて居る」
斯ういふと
「わしは決してうちへは寄せねえといつたんでがす。實は松山のうちへわしが夜は泊りに行き/\したんですが、毎晩も行つてらんねえから時々お袋等が泊りに行くこともあつたんでがす。さうするとお袋なもんですからおすがも孤鼠々々はひり込むやうに成つたんでさ。それでもはじめはわしこと見ると遁げたんですから。兼次もわしに捉まつた時二度と決して足踏はしませんて證文張つたんでがす。わし今でもちやんと持つてまさあ。そんだからわしはうつちやつた譯なんでがす」
「いやうつちやつた譯でも二人のことをお前の家へ仕事に使つたりして居るのでは駄目ぢやないか」といふと
「忙しい時はほかゝら手もねえもんでがすからね」
どれを叩いてもちつとも要領を得ない。
おすがは自分の思つ
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