壹岐國勝本にて
長塚節

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)對州《つしま》は

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)蜈※[#「虫+松」、第4水準2−87−53]《むかで》が

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)しい/\と
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 地圖を見ても直ぐ分る。對州《つしま》は大きな蜈※[#「虫+松」、第4水準2−87−53]《むかで》が穴から出かけたやうでもあるし又やどかり[#「やどかり」に傍点]が體を突出したやうでもあつて、山許りだから丁度毛だらけのやうに見える。それが壹州《いき》になると靜かな水の上に溶けた蝋がぽつちりと落ちたやうな形である。さうしてさう高い山がないから地圖で見ても滑か相である。それが一昨日《おとゝい》と昨日と空氣が冴えたので、それでなくても景色のいゝ海岸が如何にも爽快であつた。壹州に只一つ温泉場があるが入江になつて居てあたりを鯨伏村《いさふしむら》といふ。鯨伏はイサフシである。殊に昨日は一番南の郷の浦へ行
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