ヴァルのところへ駆け降りた。
二人が部屋に上って行くと、召使がさっそく朝食を持ってきたが、私は自分を抑えることができなかった。私を捉えたのは歓びだけでなく、知覚が張りきって肉をひりひりさせ、脈搏が早く打つのを感じた。私は一瞬間も同じ場所にじっとしておることができず、椅子を跳び越えたり、手をたたいたり、大声で笑ったりした。クレルヴァルは、初めのうちは、こんなに異常に元気なのは、自分がやって来たせいだと考えたが、もっと気をつけて観ているうちに、私の眼のなかにわけのわからぬ荒々しさを見た。私の大きな、手ばなしの、気の抜けた笑い声も、クレルヴァルをこわがらせ、びっくりさせた。
「ねえヴィクトル、いったいぜんたい、どうしたんだ。そんな笑いかたはおよしよ。どうも体のぐあいがわるそうだね! 何が原因でそうなったの?」
「何も訊かないで――」あの怖ろしい化けものが部屋に滑りこむのを見たような気がして、両手で眼を覆いながら私は叫んだ。「あいつ[#「あいつ」に傍点]に訊けやわかるよ。――おお、助けて! 助けて!」私は、怪物が自分をつかまえたと思いこみ、荒れ狂ってもがき、発作を起して倒れてしまった。
き
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