事ももうすっかり終ったから、やっと自由になったと考えたい。ほんとにそう願っているのだ。」
 私はひどく慄えた。前夜の出来事を考えることはもちろん、ましてそれとなく口にすることなどは、とうてい堪えられなかった。そこで急ぎ足になって、まもなくいっしょに大学に着いた。そこで、自分のアパートメントに残してきた生きたものがまだあそこに居て、生きて歩きまわるだろうと考えると、がたがた慄えが来た。私はこの怪物を見るのが怖かったが、それにもましてアンリにそれを見られるのが怖かった。だから、アンリにしばらく階段の下で待ってほしいと頼んでおいて、自分の部屋に駆けあがった。気をおちつけないうちに、手が錠前にかかっていた。私は、子どもが扉のむこう側にお化けが立って待ちぶせていると考えたときにきまってやるように、扉をむりやりにパッとあけたが、そこには何も見えなかった。こわごわ中に入ってみたが、部屋のなかはからっぽで、見るも怖ろしいお客さんは寝室にもおいでにならなかった。これほど大きなしあわせが私をみまってくれたとは、なかなか信じられなかったが、敵がほんとに退散したのを確かめたので、嬉しくなって手ばたきし、クレル
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