に停ったが、扉が開くと、アンリ・クレルヴァルの姿が見え、私を見つけてさっそく跳び降りた。「やあ、フランケンシュタイン、君に会えてこんなに嬉しいことはないよ。僕が降りた瞬間にそこに君が居るなんて、なんてしあわせなことだろうね!」
クレルヴァルに会った嬉しさは譬えようもなかった。こうしてクレルヴァルを前にしてみると、父やエリザベートやあらゆるなつかしい思い出のこもる家のことが、胸中に蘇ってきた。クレルヴァルの手を握ると、私は恐怖や不幸を一瞬にして忘れてしまい、いきなり、しかも何箇月ぶりではじめて、静かなおちついた喜びを感じた。だから、あらんかぎりの真心をこめて友を歓迎し、私の大学まで歩いていった。クレルヴァルはしばらくのあいだ、私たちのおたがいの友だちのこと、インゴルシュタットへ来ることを許された自分の幸福のことを話しつづけた。「簿記という貴重な技術だけが必要な知識の全部じゃない、っていうことを、おやじに納得させるのが、どんなにむずかしかったか、君にも容易にわかるだろうよ。まったくのところ、最後までなかなか聴き容れそうもなく、僕の根気よい歎願に対してきまって答えたのは、『ウェークフィルド
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