質の人間が、私のおかげで存在するだろう。どんな父も、かつて、私がこういう人間たちの感謝を受けるに値するほど完全には、自分の子の感謝を求めることができなかったはずだ。こんなことをつくづく考えながら私は、もしも、無生物に生命が与えられるとしたら、やがてそのうちには(今はまだ不可能なことがわかっているが)死んで腐りかけたとおもわれる体に、ふたたび生命を呼びもどせるかもしれないと思った。
 断えまのない熱心さをもって仕事をつづけているあいだ、こんな考えが私の元気を支えてくれた。頬は勉強のために蒼ざめていき、閉じこもってばかりいるために体は痩せ衰えてしまった。ときどき、もう大丈夫だという瀬戸ぎわに失敗はしたけれども、明日にも、あるいは一時間後にも実現されるかもしれない望みに、私はまだしがみついた。私だけのもっていた一つの秘密が、われとわが身を捧げた希望なのであった。そこで、月が私の真夜中の仕事を眺めているあいだ、撓むことなく、息つくひまもない熱心さで、自然をその隠れたところまで追求した。私が墓場の不浄なじめじめしたところをいじりまわしたり、生命のない土に生気を吹きこむために生きた動物を苦しめたり
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