私がそうだったように、不用心で熱に浮かされているあなたを、破滅や避けがたい悲惨事のほうに曳っぱっていきたくはないのですよ。知識を得ることがどれほど危険か、また、自分の生れた町が世界だと信じている人間のほうが、自分の持って生れたものが許す以上に偉くなろうと志している者よりどんなに幸福か、ということを、私のお説教によってでなくとも、すくなくとも私の実例によって学んでいただきたいのです。
 私は、そういった驚くべき力が自分の手中にあることがわかったとき、それを用いる方法について長いことぐずぐずしていた。生気を賦与する力はもっているが、しかもなお、それを受け容れるような、こみいった繊維や筋肉や血管をすべて具えた体躯を用意することは、依然として想像もつかない困難と労苦の仕事だった。はじめは自分に似たものをつくりだすことをやってみようか、それとももっと単純なものにしようかと迷ったが、最初の成功で想像力が昂まりすぎていたので、人間のように複雑なすばらしい動物に生命を与える能力が自分にあることを、疑う気にはなれなかった。そのとき手もとにあった材料では、そういう至難な仕事にはまにあいそうもなくおもわれた
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