いる、だから、その殺害者の逮捕に全力をあげていただきたい、と話した。刑事裁判官である知事は、注意ぶかく親切に私の話に耳をかたむけた、――「ええ、だいじょうぶですよ。骨身を惜しまずにその悪者を見つけますから。」
「ありがとうございます。」と私は言った、「では、証言しますから、お聴き取りください。これは変った話ですから、どれほどへんなことでも、それを信じさせるだけの力のある何かが実際にないと、ほんとうにはなさらないのではないかとおもって心配です。この話は、前後左右の脈絡がはっきりしていて、夢とまちがえられたりすることはありませんし、私が嘘を申しあげるいわれもありません。」知事にこう話しかけたとき、私の態度は印象的であったが、おちついていた。私は心のなかで、あの殺戮者を死ぬまで追跡する決心を固めていたので、この目的は私の苦悩を和らげ、しばらくのあいだ私に生きがいを感じさせた。私はそこで手短かに、自分の経歴を述べたが、しっかりと精確に、日附けなどにもいささかの狂いもなく、また筋みちをそれて罵倒したり絶叫したりすることもなかった。
 知事は、はじめのうちは、まるきりほんとうにしないように見えたが
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