怖の表情を浮べていたが、私には、他人の恐怖などは、ただのまねごと、つまり自分にのしかかる感情の影法師でしかないようにおもわれた。私はこの人々から逃れて、つい先ほどまで生きていた、大事な、かけがえのない、恋人でありまた妻であるエリザベートの死体の置いてある部屋へ行った。最初に見たときと姿勢が変って、こんどは、頭が腕を枕にするように置かれ、顔と頸にハンカチが掛けてあって、眠っているかとおもわれるようであった。私は馳け寄って、むちゅうで抱きついたが、死んで手足にもう動かず、冷たくなってしまっているので、いま腕に抱いているのは、自分が熱愛したあのエリザベートではなくなっていることがわかった。あの畜生の絞め殺した痕が頸についており、肩から息が出なくなっているのだった。
私がまだ絶望的に悶えて死体の上にかがんでいるあいだに私は、ふと眼を上げた。部屋の窓はそれまで暗かったが、月の薄黄色の光が室内を照らしているのを見て、一種の恐慌を感じたのだ。鎧戸が押しあけられ、開いた窓のところに、見るも恐ろしい嫌なものの姿を、名状しがたい恐怖感をもって私は見た。怪物は歯をむき出して笑い、残忍な指で妻の屍を指さして
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