回想することができなかった。
 生涯の全連続が夢のように見え、ときにはそれが、ほんとうに現実のことであるかどうかを疑った。というのは、それが現実の力を伴って順に浮んでこなかったからだ。
 眼の前に浮ぶ影像がだんだんはっきりしてくると、私は興奮した。暗やみがあたりに迫ってきたが、やさしい愛情のこもった声で慰めてくれる者は、近くには誰ひとりとしてなく、親しい手で私を支えてくれる者も、一人としてなかった。医者が薬を処方し、老婆がそれを調合してくれたが、医者は、眼に見えてまるきり冷淡だったし、老婆の顔つきには残忍な表情が強く刻まれていた。給金をもらっている死刑執行人のほかは、いったい誰が殺人者の運命に関心をもてるだろう?
 私のまず考えたのは、こういうことであったが、ただ、カーウィン氏がたいへん親切にしてくれるのが、まもなくわかった。この人は、私のために、監獄のなかでいちばんよい看房を当てがうようにしてくれたし(じっさい悲惨なのもいちばんだったが)、医者と看護人を附けるようにしたのも、この人だった。カーウィン氏は、さすがに、めったに私のところには来なかった。というのは、あらゆる人間の苦しみを救
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