降り、水が凍ったが、わたしは休まなかった。いろいろな出来事でときどき方角がわかったし、この国の地図も手に入れたが、たびたびひどく道に迷った。心の苦悶がわたしに休息を許さなかったし、激怒と悲惨のたねとならない事は起らなかった。しかも、スイスの国境に着き、太陽がふたたび暖かくなって、土に緑が見えはじめた時に起った出来事は、わたしの気もちのせつなさ怖ろしさをとくべつに強めた。
「だいたいわたしは、昼間は休んで、人の目につかない夜だけ旅行したけれども、ある朝、道が深い森のなかを通っているのを見て、太陽が昇ってからも思いきって旅をつづけたが、その日はもう春の初めで、美しい日の光や爽かな空気を浴びてつい朗らかになった。わたしは、長いこと死んだように見えていた穏かな楽しい心もちが自分のなかに生さかえってくるのを感した。こういう珍らしい感情をなかば意外に思いながら、その感情に身をまかせ、自分の孤独や畸形を忘れてすっかり嬉しくなった。甘い涙がふたたび頬を濡らし、このような喜びを与えてくれる祝福された太陽をさえ、感謝にうるおった眼で見上げるのだった。
「森のなかのうねりくねった道を辿って行き、おしまいに森
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