それにはおよびません。私どもはこの家には、二度と住めないのです。お話したような怖ろしい事情のために、父の命がひどく危いのですよ。妻や妹は、あの怖ろしさからとても立ちなおれないでしょう。お願いだから、もう何も言わないでください。あなたの貸家はお返ししますよ。とにかく私をここから立ち去らせてください。』
「フェリクスはこう言っているあいだもひどく慄えた。二人は家のなかに入り、二、三分も居たかとおもうと出ていった。ド・ラセーの家族の者は、もはや一人も見当らなかった。
「わたしは、その日の残りを、まったくの気のぬけた絶望状態のまま、小屋のなかで過ごした。わたしの保護者たちは立ち去ってしまい、わたしを世間につないでいたただ一つの鎖が断ち切られたのだ。復讐と憎悪の感情がはじめてわたしの胸に溢れたが、わたしはそれを抑えようとはせず、押し流されるままになって、危害と死だけをもっぱら考えていた。わたしの友人たち、ド・ラセーのもの静かな声や、アガータのやさしい眼や、アラビアの婦人のなんともいえない美しさを思うと、そういう考えも消え失せ、涙が溢れ出ていくらか心が慰んだ。しかし、また、この人たちがわたしを足蹴
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