では、あいてを僕の美しいアラビア人と呼んだ。婦人はそのことばがわからなかったらしかったが、それでもにっこり笑った。フェリクスは、手を貸して婦人を馬から下ろし、案内人を帰してから、婦人を家のなかに連れて来た。息子と父親のあいだで何やら会話が交され、その見知らぬ婦人が老人の足もとにひざまずいて、その手に接吻しようとしたが、老人はそれを立たせて、愛情のこもった抱擁をした。
「見知らぬ婦人は、明哲な声で語り、自分の国のことばで話しているように見えたが、それは、この家の人たちの誰にもわからず、婦人のほうでも、この人たちの言うことはわからない、ということに、わたしはすぐ気づいた。みんなはわたしにはわからない手まねをいろいろしたが、ただわたしにも、この女の人が現われたことが、家じゅうに喜びを満ちわたらせ、太陽が朝霧を払うように、この人たちの悲しみを払ったことは、わかった。フェリクスはとりわけ幸福らしく、歓びにほころんだ笑顔で、このアラビア人を歓迎した。アガータ、いつも気だてのやさしいアガータは、美しい客人の手に接吻し、兄を指して、あなたがおいでになるまでは悲しんでいたのです、というように見える手まね
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