厚いヴェールをかけていた。アガータが何か尋ねたが、それに対してその見知らぬ婦人は、美しい声で、フェリクスの名を言うだけであった。その声は音楽的だが、この家の人たちの誰の声とも似ていなかった。それを聞いてフェリクスが急いでそのそばへ行くと、婦人はそれを見てヴェールをはずしたので、天使のような美しさと表情に溢れている顔が見えた。髪の毛は黒光りがして、妙なぐあいに編みあげてあった。眼は黒かったが、いきいきとしていながらやさしかった。顔立ちは整っており、肌の色は驚くほど美しく、頬は愛らしい薄桃色だった。
「フェリクスは、この婦人を眼にすると、歓びにすっかり心を奪われたらしく、悲しみのあとかたもない顔になって、そんなことがありうるだろうかとわたしが信じかねたほど、たちまち有頂天の歓びを見せた。こうして、頬が嬉しさに紅潮すると、眼が輝き、その瞬間にわたしが、この男も御婦人と同じように美しいなと考えたくらいだった。婦人のほうは、それとは違った感情に動かされたように見え、その愛らしい眼の涙を拭きながら、フェリクスに手をさし出すと、フェリクスはむちゅうになってその手に接吻しながら、わたしにわかったかぎり
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