は縦中横] アラビア娘の来訪


「さて、話を端折って、もっと大事なところに入るとしよう。で、以前のわたしを今のわたしに変えた気もちを 押しつけられた出来事について、つぎに述べることにする。
「春はたちまちのうちにたけなわとなり、天気がよくなって、空には雲もなかった。以前は荒凉として陰欝だったものが、今はすこぶる美しい花や線で燃え立つばかりになったのには、驚いてしまった。わたしの感覚は、無数の気もちのいい香り、無数の美しい眺めでもって、満足させられ、元気づけられた。
「こういった日がつづいているうち、ある日、家の人たちが定期的に仕事を休んで――老人がギターを弾き、若い者たちがそれに耳を傾けていた時のことだったが、わたしが見ていると、フェリクスの顔いろがなんとも言いようのないくらい憂欝で、しきりにためいきをついた。すると、父親が、一度はその音楽をやめて、息子の悲しみの原因を尋ねたことが、そのしぐさで察しられた。フェリクスは快活な口ぶりで答え、老人がふたたび音楽をはじめたとき、誰かが戸をたたいた。
「それは、馬に乗って土地の者を道案内につれた婦人であった。婦人は黒っぼい色のスーツを着、黒の
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