だん働いて手助《てだすけ》をしてくれるので、一家にとっては、はなすわけにはゆきませんでした。
 親子は毎日悲しい言葉をくりかえしていると、ある晩、小さい子のマルコが、
「お父さん僕をアメリカへやって下さい。おかあさんをたずねてきますから。」
 と元気のよい声でいいました。
 父親は悲しそうに、頭をふって何の返事もしませんでした、父親は心の中で、「どうして小さい子供を一人で一月もかかるアメリカへやることが出来よう。大人でさえなかなか行けないのに。」と思ったからでした。
 けれどもマルコはどうしてもききませんでした。その日も、その次の日も、毎日毎日、父親にすがりついてたのみました。
「どうしてもやって下さい。外の人だって行ったじゃありませんか。一ぺんそこへゆきさえすれば[#「すれば」は底本では「すれぼ」]おじさんの家をさがします。もしも見つからなかったら領事館をたずねてゆきます。」
 こういって父親にせがみました。父親はマルコの勇気にすっかり動かされてしまいました。
 父親はこのことを自分の知っているある汽船の船長に話しすると船長はすっかり感心してアルゼンチンの国へ行く三等切符を一枚ただく
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