であつた。
「一たんポリチックに足を踏みこんだら、それこそ泥沼に落ちたも同じことよ。それから脱け出ることは容易でなく、その上、正直では決してうだつの揚らぬところ、あなたの戀愛病があなたを救つたのよ」
とマダムは得意であつた。
マダムの仰しやる通り、わたしは大病だつたのです。その病人を棄てもせずに、深い友情をもつて、引き立ててくれた平民社の先輩達には今も心から感謝せずには居れません。平民社同人の思想的態度は、今から見れば極めて素朴なもので、またロマンチックであつたに相違ないが、しかし、あの黎明期に於ける混沌の中に、高いヒューマニズムの精神に徹してゐた點は、今も忘れることのできない美しさでありました。日本に於ける社會主義、共産主義、無政府主義等の稱を宿してゐた、あの温床は可なりに健全であり、豐饒であつたと思ひます。
日本の社會思潮の上から見ればあの平民社の生活は、汲めども、汲めども、滾々として汲み盡すことのできない清冽な泉にも喩へらるべきであります。それはあの當時に於ける思想や主義の社會的價値にも由るでせうが、しかしあの峻烈嚴酷な鬪爭の中にも、常に明朗な陽春の雰圍氣を湛へて、若い男
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