屆くやうに發送しました。わたしの豫想は過たず、官僚が屠蘇の醉ひからさめると同時に發禁の命令が横濱警察に來ました。警視廳は西村氏の東雲堂に書籍差押に行つたが、そこには勿論五、六册しかありません。奴等はやつきになりました。わたしのところにも一册もありません。已を得ずわたしを警察署に引つぱりました。わたしは夜具の毛布を背負つて横濱警察に行きました。
「書籍をどこへかくしたか?」
 といふ、きつい訊問です。
「公然屈けいでた出版物です。何の必要があつてかくしませう」
「でもどこにも無いぢやないか?」
「もう出來てから一週間になります、大部分は支那の同志が支那に持つて行きました。今時分は船の中で黄海あたりを渡航中でせう。もう少し早くお知らせを下さればよかつたですが、外國船に積み込まれたのでどうすることも出來ません」
 署長さんも今更怒つてもしかたがないと思つたか、ことやはらかに
「それでは歸つてもよろしい」
 と來た。かうして、たわいなく事件は經過し去りました。この事件が因縁になつて、わたしの日本脱走が發起されるに至りました。
 明治四十五年の夏、福田氏一家は東京角筈の家にゐられなくなつて、一ま
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