菜畑の女を弥[#「弥」に「(ママ)」の注記]く。(立派な野菜を枯らすので)
聖ミシエル(九月廿九日)に暑気は天に登る。
聖シモン(十月廿八日)に、扇子は休む。
ツスサン(十一月二日)には、マンシヨン(手被ひ)と手袋。
聖カテリン(十一月廿五日)に、牝牛は乳場へ行く。
一月に生れ、二月に柔ぎ、三月に芽ぐみ、四月に[#ここから割り注]〔一字欠字〕[#ここで割り注終わり]び、五月に茂る。(栗の発育)
一月の酷寒、二月のしけ、三月の風、四月の細雨、五月の朝露、六月の善い収穫、七月の好い麦打ち、八月の三度の雨、それはソロモン王の位よりも尊い。
杜鵑《ほとゝぎす》が鳴く頃は、湿つた日もあり、燥いた日もある。
黒つぐみが鳴くと冬は行く。
以上の外、伝説的俚諺を列挙すれば際限も無いが、余り長くなるから今回は此で止める。百姓は自ら自然の気候を解得して、農作の順序を過らない。農事の成功不成功が半ばは此気象観察に基くことを知らば、之れは決して、軽視《おろかせ》にできない。
◇
▲希望と歓喜 五月六月は、農園の地面が最も美しい時期です。葡萄畑では若い緑葉の間に芳烈な力と
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