ほど貯へられてあつた。畠をうなふ[#「うなふ」に傍点]前に私はブルエツト(小車)で何十回といふ程、其馬糞を運び入れた。今、其馬糞が土地を温め、若い植物を元気づけて居るのである。
人蔘もカブラ[#「カブラ」に傍点]もインゲン[#「インゲン」に傍点]も非常に立派に出来た。私一人ではトテも喰べきれないので、好便の度毎に巴里に居る家主の処へ送つてやつた。肉類の余り新らしいのは甘くないが、野菜物ばかりは畠から取りたてに限る。私の巴里に送つた野菜物は、全然八百屋の物とは味が違ふのであつた。甘い果物や野菜物を味い得るのは、是れは田園生活者の特に恵まれたる幸福である。
仏蘭西に、予期された革命は来なかつたが、私の蒔いた種は、予期されたよりは立派に発生した。馬鈴薯などはズンズン延びて、林の様に生ひ茂つた。そして其濃い緑葉の中に、星の様に輝やいた美しい花をも開いた。此馬鈴薯は、当国ではパンに次いでの重要な食料である。其重要な食料が立派に発育したので、私の喜びは非常なものであつた。
処が其馬鈴薯は、九月の末になると、花も落ち、葉の色も褪せて了つた。十月の末になると見る蔭も無く枯れ果てた。更に十一月の末
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